日刊オレラ

極上のひまつぶせるマガジン!

【怪談】夏だし怖い話でも...【恐怖】



f:id:rikotamasaki:20150706164527j:plain

出典 http://www.photo-ac.com/

 

オレラ好きのみなさん……

こんにちは……

 

 

 

ジメジメとした梅雨ですね……

 

深夜、窓の外の雨音に混ざる誰かの足音……

ヒタ。ヒタ。ヒタ。

 

止んだ足音に気を取り直して

ふと、マンションの廊下側の窓を見ると、不気味に映る黒い人影。

ピンポ〜ン……

 

「うわあああああああ!!!誰だ貴様っ!

「開けてくださいぃ、開けてくださいぃ……おえっ…(以下自主規制)」

「うわああああああああああ!!!」

 

酔った隣のご主人が、若き日のたまさき宅前でエクトプラズムを出した話よ……。

お食事中だった方はごめんなさいね。

 

物理的に怖い話ってなると、どうしても「人間怖い」って布団かぶって

部屋に閉じこもりたくなる話ばかりになっちゃうんだけど、

今回は梅雨が明けたら夏。

 

夏といえば怖い話ということで、怖い話をすこし……

個人的には「ねるねるねるね」のCMで高笑いを決めたあと、

ピコーンって光っちゃう魔女が怖かったんだけど、そういうのじゃないわ。

 

これから話すのは、聞きたての知人の体験談……

 

病室のロッカー

総合病院で働くAにとって、多少の怪奇現象は「あってあたりまえ」の

ことでした。

 

不可思議な現象を、非科学的だと思い否定することも、

幽霊だと強く信じることもなく、ただ「職場のあるあるネタ」として

消化していたのです。

 

新年度、新卒の後輩が配属され、教育係として忙しい日々を送っていたAは、

まだ夜勤が発生しない後輩に合わせて、日勤帯中心の勤務シフトを満喫していました。

 

帰宅してからも、後輩のための資料や日報の添削などに時間を割いていたのですが、

夜勤が続くよりも体力的にはとても楽です。

 

後輩の夜勤シフトが始まる頃、Aも合わせて夜勤シフトが復活しました。

 

何回目かの、後輩との夜勤の日のこと……。

 

患者さんによっては心拍数をはかるモニターを装着していて、データはナースステーションのパソコン上で確認ができるようになっているのですが、そのパソコンが、心拍数激減の警告音を鳴らしました。

 

深夜の病棟に鳴り響く、心を不安にさせる電子音……。

何度聞いても慣れないけれど、眠っている他の患者さんのためにも、警告音を止めて、すぐに病室に向かわなければなりません。

 

パソコンの近くにいた後輩がすぐに警告音を止めて、Aは当直のドクターに内線をかける準備をしながら、病室に向かう後輩の後を追いはじめました。

 

ペタペタ、パタパタ。

なるべく足音を響かせず、急ぎます。

 

非常灯と、足元の補助灯しかついていない廊下を小走りに進み、

直線上に続く廊下の、一番奧の左手側にある病室の手前に後輩がたどり着いたとき……

そこで、さああっと血の気が引き、全身の毛が逆立ちました。

 

「まって!」

Aは、小声で制止をしました。

後輩はなにも不思議に思わないようで、病室の扉を開けようとしています。

「後輩まって!!!」

 

Aはもう一度、小声で怒鳴るように止めました。

しかし……

後輩の手が触れている病室のドアが、ゆっくり、カラカラと開きました。

カラ、カラ。

 

不気味なほど緩慢な動きで開かれる扉に、つい魅入られてしまいます。

その間、わずか数秒だと思いますが、息も忘れ、ただ眺めるだけ。

 

カツン!!

「わっ!」

 

後輩は、全開になった扉に驚いて、手にしていたペンライトを落としてしまいました。

 

その音でAは我に返り、後輩の腕を掴んで早足でナースステーションに戻りました。

「先輩、中っ、患者さんっ」

 

容態確認しないでいいんですか、急がないと。先生呼ばないと。

 

そう言って慌てる後輩と共に、廊下よりも明るいナースステーションに着くと、その日の入院患者が入室する部屋が記された、ボードを見せました。

 

「……そうだ、この部屋誰もいないし……ここって」

「そう。ここは、いつも鍵が閉まってるでしょう」

 

あの病室は、いつも鍵がかかっている空き病室でした。

病室数としてカウントされることのない部屋なので、ナースコールが鳴ることもなければ、廊下の奥に心拍数を監視しなきゃならないような、重篤な症状の患者さんを配置するはずがありません。

 

それなのに、警告音が鳴った時から違和感もなく、すぐに「行かなきゃ」と駆り立てられたのです。

 

どういった経緯で開かずの間になっているのか、Aも知りませんでした。

たまに、妙な噂が立つ部屋を空き部屋にしたり、時間を置いてから解放することを目にしてきたので、「そんなもの」だと納得したまま、理由を聞く機会を失ったままだったのです。

 

2人同時に見舞われた怪現象に、さすがのAも鳥肌が立ちっ放しです。

後輩に至っては、顔面蒼白で、Aにぴったりとくっついたまま離れません。

 

「……鍵……閉めなきゃね。あと、ライト……拾いに行かなきゃ……待ってる?」

病室を開けておくわけにもいかないし、後輩が落としたライトも、トイレに行く患者さんが間違って踏んでしまったら一大事。

 

Aは意を決して、病室に戻ることにしました。

後輩を見ると、病室に行くのも、ひとりで待つのも嫌そうです。しかし、それではらちがあかないのでいっしょに行くことにしました。

 

ペタ、ペタ。

ふたりのナースシューズが、廊下に張り付いては剥がれる音だけが、耳に入ります。

 

ペタ、ペタ。

 

廊下の奥で光る、後輩のペンライトを目指し、 Aは病室の鍵を握りなおしました。

 

ペタ、ペタ。

キイィ……

足音とは別に、何かが軋む音がかすかに聞こえました。

 

Aは嫌な予感でいっぱいでしたが、就寝中の患者さんの手前、悲鳴をあげるのをこらえて歩みを止めずに進みます。

一方で後輩の息遣いは荒く、Aに抱きつくようについてきます。

 

後輩がぶら下がるような形なので、重たくて歩きにくくて仕方ありませんが、人肌がわずかな安堵感をもたらしているのに違いありません。

 

病室の前に転がるペンライトの手前にくると、ものすごくホッとしました。

Aが、ペンライトを拾い上げようとしたときです。

 

「わああああっ!!」

 

シュッと病室の中から茶色く骨ばった手のようなものが伸びてきて、ペンライトをかっさらっていきました。

 

ペンライトの光が病室を一瞬だけ照らし、その光が部屋に設置されているロッカーに引き込まれて行くのが見えました。

 

キィイ! バタン! 

さっきの軋んだ音は、ロッカーが開いた音だったのです。

 

今度はロッカーの扉が慌ただしく、荒々しく閉められて、ペンライトの光が消えた病室は、また暗闇と静寂に包まれています。

 

「……」

「……」

 

Aは白衣の下で、大量の汗が流れているのを感じました。

手足は氷のようなのに、汗はどんどん噴き出してきます。

これが冷や汗かとぼんやりと考えるようになり、放心状態から解放されたAは警備室に連絡して、院内警備員を呼びました。

 

駆けつけた警備員と、上司の到着を待って、病室内に侵入者がいないか確認するためです。

 

内線をかけた後、上司が先に到着しました。

そして扉が開いている「開かずの間」を見てこう言いました。

 

「……ああ、後輩さん……悪いけど配置換えしないとなあ。この部屋のロッカーはねえ、どうもなにかいるみたいでねえ。むかし、ここに入院していた人が荷物を入れてしばらくすると、全部放り出されているっていうことがあってね」

 

上司の語りを聞いている間に、老齢の警備員も到着して、ああ……とため息をつくものだけら、後輩はすっかり怯えてしまっています。

 

ガタガタと震える後輩の背中をさすりながら、Aは警備員が中も見ずに鍵をかける様子を見守りました。

そして上司は、続けました。

 

「当時のそれは、病棟に入院していた、別の認知症の患者さんが、徘徊しながらやっていたことなんだけど。荷物を出して、ここの開いたスペースにすっぽり入るのが落ち着いたらしんだよね。でも危ないからさ、その患者さんがいる間は、空き部屋にして鍵をかけた。この部屋のロッカーにだけ執着したからね」

 

「……でももう、いないんですよね」

Aが確認すると、上司は黙って頷きました。

「別の病棟で亡くなってしまったんだが、その後も部屋を開けておくと、別の場所でなくなったものがこのロッカーから出てきたりというのが多発してね。きっとあの人がイタズラしてるんだろうと思っていたんだけど、もっとタチが悪いなにからしい」

 

「それと……わたしの配置換えは関係するんですか?」

後輩が震える声で聞くと、上司が衝撃的な一言を放った。

「気に入った人を見つけると、ロッカーに呼び込むんだ。はじめはなくし物。次に部屋への妙な執着。以前勤めていたナースが、このロッカーで丸まっているのを見たときに、閉じることを決めたんだよ。はじめはなくしたペン、聴診器、白衣がこのロッカーから見つかり、そして本人。さすがになあ。最後は魂持ってかれるって思ったよ」

 

この話を知るのは、病院がたった当時のメンバーだけじゃないかなって、上司は付け加えた。

 

滅多に悪さをすることはないけれど、たまに、気に入った患者や職員を見つけると、「動き出す」らしい。

 

部屋を清めても、鍵をかけてもだめ。

ロッカーを取り壊そうとすると、業者さんに怪我をさせたりと何かしら起こる。

 

だから、「気に入った人」を遠ざけることで対処していたそうです。

 

この後の後輩は、希望もあって系列の病院に移って、現在も現役で働いています。

==========

 

いかがでした?

Aさんは、あれから1度だけ、あの部屋のロッカーの開閉音を聞いたそうです。ちょうど今年、新人さんを迎えたとき……

 

Aさんはすぐに上司に掛け合い、新人さんを別の病棟に異動させたのですが、まだ不安は拭いきれないそうで、監視をするとのこと。

 

これはマズイと思ったときは、かつての後輩のように、別の場所で働いてもらうつもりなんですって……まだ、新人さんは……気づいていない。

 

その事実が一番怖いわ……

 

あなたかもしれないじゃない……

 

 

 

本日の語り部

この作家を指名して応援