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日刊オレラ

極上のひまつぶせるマガジン!

【夏休み特集】永過ぎた青春時代からの――『(500)日のサマー』【映画紹介】



みなさんどうもはじめまして、烏之介(うのすけ)と申します。

これから「日刊オレラ」にて映画に関する記事を書かせていただくことになりました。

出来るだけ分かりやすい記事を心がけて行こうと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

さて早速なんですが、学生の方々は夏休み突入ということで、これから三本連続「夏」をテーマにした映画を取り扱って行きたいと思います。

 

                              www.youtube.com

あらすじ

グリーティングカード会社に勤めるトム(ジョゼフ・ゴードン・レヴィット)は、ある日上司の秘書として入社してきたサマー(ズーイ・デシャネル)に一目惚れしてしまう。社員参加のカラオケバーでの飲み会をきっかけに二人は親密な関係になっていく。順調に見えた交際だったが、「恋人」と思いたいトムに対し「友達」を強調するサマーの間にある溝が、徐々に浮き彫りになっていく。

 

 

 

 

 解説

まず一本目は『(500)日のサマー』です。これは実は夏は関係ない映画なのですがヒロインの名前がサマーということに因んで取り上げてみました。

公開された当時(約5年前)は物語の特殊な構造やミュージカルのようなシーンが入っていたりして、全体的にオシャレだということもあり映画ファンの間でちょっとした話題になりました。

私が本作品について知った時には既に公開が終わっており、DVDで観たような記憶があるんですが、なにより甘酸っぱい青春時代の恋愛を思い出すようなデートシーンが印象的な映画でした。

 

 

ポイント

 

物語はフラれる所から始まる

この作品は先程書いた通り特殊な構造になっていて、物語はまずトムがサマーにフラれる290日目からスタートします。そこから1日目、つまりトムとサマーが出会う所に戻って、その後も進んだり戻ったりしながら500日目の間に二人の間に何が起こったかを映し出して行きます。

 

愛なんておとぎ話

サマーは自由人で、「人と付き合って誰かの所有物になるのが嫌」と言います。そこでトムが「じゃあもし誰かと恋に落ちたら?」と聞くと「愛なんておとぎ話(幻想)」だと言います。そこで更にトムは「愛は感じるもの」と言い、サマーは「私達意見が合わないわね」と返します。しかし何故かこのことがきっかけで二人の仲は親密なものになって行きます。

 

ミステリアスなサマーに惹かれるトム

オシャレで可愛くて謎めいた所のあるサマーに、トムはのめり込んでいきます。普通の子と違い、変わった行動をしたりバカな映画に付き合ってくれたりするサマーと自分は、ベストカップルだと思い始めます。

 

来たる290日目

それまで順調そうに見えていた二人の交際は、突然急降下し終わります。少なくともフラれたトムには衝撃的なことで、青天の霹靂でした。理由を問うトムに「だって私たち何してるの?」とサマーは答え、その後傷付いて帰ろうとするトムを止める為の「行かないで、私達親友でしょ?」という言葉が最後の言葉になりました。

 

 

解釈

さて、以上ポイントで挙げた点はあらすじでもありますが、実はとても重要な箇所でもあるんです。「なぜこんな結果になってしまったんだ」と思うのはトムだけじゃなく、トムに思い入れていた観客もそうだと思いますが、トムはさておき観客はこの映画の構造に混乱させられているのだと思います。回想に入ると日にちが戻って仲が良かった頃の二人が映り、その後対比として終盤のぎすぎすした二人が映ったりと行ったり来たりしながら進むので、何が起こったかはわかるのですが(少なくとも一度観ただけでは時系列を整理できずに)何故そうなったのかがわからないと思います。これは映画の見せ方として上手く、斬新だと思いますが、それによって巧妙にあることを隠してもいるんです。

 

 最初から違う方向を見ていた

そのあることとは何かというと、二人の関係の浅さです。

この二人、実は最後まで本当に意味では付き合っていないんです。確かにサマーは自由人で思わせぶりで勝手な所はありますが最初から言っていることに筋は通っているのです。

どういうことかというと、ここで先程のポイントで挙げたことを思い出していただきたいのですが、サマーは親密な関係になる前にトムと愛について話した時「私達意見が合わないわね」と言いますが、それが全てなんです。最初から二人は根本的に考え方が違っていて、サマーは初めから愛なんて信じていないのです。だったらなぜ付き合ったのかと思うでしょうが、サマーは何度も「友達でいましょう」と繰り返します。途中はっきりさせたいトムが怒った為に謝りますが、それでもサマーの意見は変わっておらず最後に「私達親友でしょ?」と言ってしまうのです。なので本記事を書く際に私も二人の関係性を「親密な関係」という表現に止めておいたのですが、なぜサマーはそんな関係を続けていたのでしょうか。

それに関しては物語中ではっきりと言及されませんが、私はもしその理由をサマーに尋ねたならば「若かったから」と言うと推測します。なぜそう推測するか、それはサマーがカラオケバーのシーンで同僚に、何故恋人を作らないのかと聞かれた時に「付き合うのは誰かの所有物になるから嫌だ」と言った後に続けて「まだ若いし(中略)今のうちに楽しまなきゃ」と言っているからです。

「若かったから」。その答えを聞いたらトムは更に傷付くでしょうが、そういったサマーの感性は彼女の生い立ちが関係しているように思います。

 

二人の生い立ち

 

映画冒頭、二人の幼い頃を回想するシーンでこんなナレーションがあります。

 

「彼はニュージャージー州出身のトム・ハンセン。運命の人と出会うまで本当の幸せは来ないと信じて育った。後ろ向きなイギリスのポップスに早くから染まったのと、『卒業』という映画を完全に読み違えたせいだ。ミシガン州出身の彼女、サマー・フィンにはそういう思い込みは無かった。両親が離婚して以来、彼女が愛したのは二つだけ。一つは自分の長い黒髪。もう一つはその髪を切っても、何も感じないこと。」

                                 (映画冒頭のナレーションより)

 

トムも両親が離婚するのですが、時期は明らかにされません。対してサマーは10歳くらいの頃(映像にはそれくらいの年齢の子供が映る)には、既に両親が離婚していることが分かります。彼女の「人への愛」に対する信仰がないのもそのことの影響があるかも知れませんが、もっと重要なのは大事な髪を切っても彼女が何も感じないということです。

彼女は愛したものから解放されること、つまり自分が自由になることも同じように愛したのです。

 

『卒業』の捉え方

この冒頭ナレーションに何気なく入っている『卒業』に対するトムのスタンスが、実はとても重要な意味を持ってきます。

本作の後半で二人は映画館に『卒業』を観に行きます。カメラに映っているのは有名なラストシーン、ベン(ダスティン・ホフマン)がエレーン(キャサリン・ロス)を協会から連れ出し駆け落ちしてバスに乗り込むシーンです。このシーンを観てサマーは泣きだします。本作で唯一サマーが泣き崩れるシーンです。トムはこのラストシーンを観て「運命の人に出会うことが本当の幸せなんだ」と幼い頃思いました。

しかしこのシーンは意味が深いことで有名なシーンで、まずその当時の映画界の新しい時代を幕開けを象徴するという意味(この意味については今回は言及しません)と、ベンとエレーンの二人が現実と向き合うという意味を持ったシーンなのです。二人は駆け落ちしますが、バスに乗ってしばらくすると将来の不安からベンから喜びの表情が消え、そしてそれを見たエレーンも何かを察したように暗い表情になっていくのです。

つまり、この『卒業』という映画のシーンを観てサマーが泣いたのはこの作品の中に自分を投影して「こんな関係はいつまでも続けていられない」という溜まっていた将来への不安が噴出したからなのです。そしてそれを物語るかのように映画を観た後、サマーは別れを切り出します。(つまりこれは290日目の出来事です)

 

若過ぎた二人

彼にも同情する部分はあります。というのも、サマーも奔放すぎるからです。親密な関係になったからといって翌日会社でコピーしている時にいきなりキスをしてきたり、かと思えば何事も無かったかのようにスッと表情が戻ってその場から離れたり。そもそもサマーにとってトムは運命じゃないけど気に入っている人、つまり都合の良い男なんです。好きな人に優しくされたり、恋人の様な関係を続けられたら勘違いしてしまうのも無理はありません。

ただ、それを考慮してもこのトムの精神的な幼さは否めません。トムが恋愛経験が少なく耐性が無いということを考慮しても目を細める部分があります。(いくらなんでも失恋したからといって無断欠勤をしたり会議中に会社を批判するのは目に余ります。)

そんな二人を観ていて、私が率直に感じたのは「学生の様な恋をしているな」ということでした。私は本記事の冒頭で「青春時代を思い出すような」と書きましたが、冷静に考えると二人は学校を卒業した社会人です。そのことを意識してもう一度映画を思い返すと、二人の言動に違和感を感じてしまうのは私だけでしょうか。本作品の受け止め方はそれぞれあるでしょうが、私はこの経験を通して二人は永すぎた青春時代から「卒業」したのではないかと思います。

 

 

 まとめ

大変長くなりましたが、夏休み映画特集第一弾『(500)日のサマー』についての考察でした。

こういったことを考えなくてもテンポの良いよく出来た映画ですし、細かいレベルのことでいうと、例えばトムが失恋から徐々にペースを取り戻すというシーンでは、BGMとトムの投げるボールの跳ねる音が段々リンクしていくなど、さり気なく気の利いた演出がされていたりするので興味の沸いた方は観てみてはどうでしょうか。

またこの映画の二人の様な、「正しくはないけれど本人にとっては重要な恋愛経験」が過去にあった方なら懐かしい気持ちで観賞出来ると思いますので是非ご覧ください。

 

 

 

付記

・本編中、トムとサマーがレンタルDVD屋のアダルトコーナーに二人で入るシーンがありますが、実際に真似すると男性客から親の仇の様な目で見られるので絶対にやめましょう。

・本作よりもっと恋愛ボンクラ男が観たい方には『ルビー・スパークス』という作品をお薦めします。

 

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ルビー・スパークス [DVD]

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ルビー・スパークス [Blu-ray]

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作品情報

 

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『(500)日のサマー』

公開年:2009年(日本公開は2010年)

監督:マーク・ウェブ

出演:ジョゼフ・ゴードン・レヴィット、ズーイー・デシャネルほか 

 

 

 

▼この記事を書いた人▼