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日刊オレラ

極上のひまつぶせるマガジン!

【小説】第4話『二人の神官とライブの準備、そして違和感』~異世界バンドマンは世界を救わない~

小説 小説-異世界バンドマンは世界を救わない




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イラストbyまがたさん

「早速ライブの打ち合わせをしましょう。クック、ロビン。入ってきて良いわよ」

 カナリアがそう口にすると、部屋に二人の女性が入ってくる。二人共白い甘ロリドレスを着ていた。

 

前回

orera.hatenablog.com

 

 

 メガネをかけた生真面目そうな女性がまず頭を下げる。

「クックと申します。カナリア様を祀る神官の一人です。どうぞお見知りおきを」

 続いて十歳くらいの小さな女の子が頭を下げる。

「ワシも神官の一人、ロビンじゃ。長命の種族で、こう見えて齢は千歳を超えておる。困った事があれば存分に頼ってくれ」

 こちらもすぐに頭を下げる。だが村ちゃんと天馬君の様子がおかしかった。

「どうしたの?」

「巨乳!」

「ロリババァ!」

 二人の叫び声が同時に響いた。

 

「おっぱーい!」

 そう叫ぶなり、村ちゃんはいきなりクックさんに向かいダイブした。

「きゃ! なんですかいきなり」

「甘ロリメガネに巨乳なんてマジ反則だぜ! どうだ、どうだ!」

「あんっ!」

 村ちゃんがクックさんの胸を揉みしだく。村ちゃんの言うとおり、クックさんはかなりの巨乳だった。どうやら複数の属性が組み合わさり、村ちゃんの理性をふっ飛ばしてしまったらしい。

「ほれ、ほれ!」

「や、やめっ」

 このままだといく所までいってしまいそうだ。そう思っていると妖精が飛んで来て、村ちゃんの頭の上に金ダライを落とす。鈍い音が響き、村ちゃんが気絶した。

「もう、なんなのですかこの人は!」

 クックさんの叫び声が響いた。

 

 そうかと思えばこちらでは。

「ロリババアキタコレ! マジ可愛すぎるだろう常考!」

 天馬君はロビンさんの頭をひたすら撫でていた。

「何をする! ワシは子供じゃないと言っておるだろう!」

「そのギャップが堪らないのでござる! ロビンたんは俺の嫁!」

 天馬君がとんでもない事を言い出した。初対面の女性にいきなり『俺の嫁』宣言をするなんて。するとロビンさんはケロッとした顔でこう言った。

「お主の嫁か。ワシも独り身であるし、お主に嫁ぐのも悪くないかもしれんの」

「公認キター! ロビンたんの事もっとモフモフしたいでござる!」

「まったく、仕方ないのう」

 こちらはこちらで大変な事になっていた。

 

「えーっと、一度仕切りなおしという事でよろしいでしょうか?」

 カナリアが汗を浮かべながら問いかける。村ちゃんは縄で椅子に縛られ、動けない状態になっていた。それをクックさんが遠目から汚物を見るように眺めている。

 そうかと思えば天馬君の膝の上にロビンさんが座り、ずっと頭を撫でられていた。二人はほのぼのとした空気を醸し出している。

「問題ない、と思います。」

 僕は目の前に広がる光景を無視してそう言った。このままではとても話が進まないと思ったからだ。

「それではライブについて改めて話し合いを開始します」

 そうカナリアが宣言すると、さすがに場の空気も真面目なものになった。

 

「まず聞きたいのだが、機材はどうするんだ? 見た感じこの世界に電気は通ってないようだし、機材を使えなければライブにならないのだが」
 早速村ちゃんが重要な議題を始める。アンプなど電気を使う物はライブでは必須だ。
 その点に関してカナリア達はどう考えているのか。様子を伺っていると、カナリアは意外な程あっさり答えた。
「それなら妖精達がなんとかしてくれます」
「妖精って、さっき俺の頭に金ダライを落としたやつか?」
 村ちゃんがクックさんに向け皮肉を言う。クックさんはそれを気にせず語りだした。
「妖精は種類を問わず物を運ぶ力を持っています。これを応用すれば電気も運べるでしょう」
 その言葉に僕達は驚いた。

 

「妖精っていうのはそんな事もできるのでござるか」

「可能じゃ」

 天馬君の問いかけにロビンさんが即答する。

「妖精は不思議な生き物じゃ。対価さえ払えばどんな物でも運んできてくれる」

「対価とはなんでござるか?」

「歌じゃよ」

 なるほど、さすがここは音楽の世界だけある。歌の力でなんでもできるということだ。

「もちろん機材の搬入も妖精達がしてくれます。対価に関しては、私達神官とカナリア様が既に支払っているので、問題ありません」

 クックさんの説明を聞き、妖精は本当に便利だと思った。機材等も運んでもらえるならこちらとしては大助かりだ。

 こうしてライブのセッティング自体はあっさりと決まった。

 

「それぞれそちらの世界でやる事もあるでしょう。一度解散しましょうか」

 打ち合わせが終わり、カナリアの一言によって僕達は再び現実世界に戻る事になった。

 帰り支度を済ませると、即座にカナリアが現実世界に続く穴を開けてくれる。

「それではまた後日」

 村ちゃんが挨拶をし、穴の中に入って行く。僕も続いて行こうとすると、カナリアに呼び止められた。

「どうした?」

「ケンスケ様、その……」

 一度言いよどんだ後、カナリアが笑顔で口を開く。

「ライブ、楽しみにしております。よろしくお願いしますね」

「こちらこそ」

 そう口にしつつ僕はこんな事を考えていた。ここまで期待されて、その期待に応える事ができるのだろうかと。

 

 こうして僕達は現実世界、元居た部室へと帰ってきた。こうやって現実に戻ると、さっきまで異世界にいたのがウソのように感じる。
「あの巨乳、良かったなぁ……」
 すると村ちゃんが手をワキワキさせながらそうつぶやく。
「絶対ライブ成功させて、あのメガネ甘ロリおっぱいちゃんを俺の物にしてやる!」
 どうやら村ちゃんはやる気のようだ。クックさんが不憫に感じられるが。
「拙者の嫁、ロビンたん、デュフフ」
 すると今度は天馬君が不気味な笑い声をあげた。どうやら頭の中はロビンさんの事でいっぱいらしい。
「このライブ、絶対に成功させるぞ!」
「おー! でござる」
「お、おー!」
 二人の気迫に僕はすっかり押され気味だった。

 

「それじゃあ時間もまだまだあるし、練習を再開しますか!」

 確かに村ちゃんの言うとおり、下校時刻まではまだ時間があった。楽器もそのままの状態で教室に残されていたし、練習ならいますぐできる。

「さぁ、各自配置につけ!」

 その一言で僕らはそれぞれの立ち位置についた。ギターを軽く触ってみる。よし、問題ない。

「始めるぞ!」

 その声にあわせ天馬君がドラムのスティックで合図をする。

(ワン、ツー、スリー、フォー!)

 演奏が始まる。僕はギターの演奏と共に歌を歌い出した。

 いつもなら気持ちのいい演奏の瞬間。しかし、

(あれ?)

 演奏をしていて、僕は何か違和感があった。

 

 演奏が始まったものの、僕にはなぜか違和感があった。普段なら腹に響く村ちゃんのベース。それがなんだか気持ち悪い。天馬君のドラムも、全然リズムに乗れなかった。

「ちょっとストップしよう」

 村ちゃんも違和感があったのか、演奏を中断させる。

「なにかおかしくないか、今の演奏」

「拙者も変に感じたのでござるよ」

 やっぱり今の演奏は何かがおかしい。でもその理由が掴めない。

「もしかして二人共、緊張しているのか?」

「そういう村岡氏はどうなのでござるか」

 場を沈黙が支配する。

「……とにかく、違和感がなくなるまで練習してみよう」

 村ちゃんに従い再び演奏を始める。しかしこの日、最後まで違和感が無くなる事はなかった。

 

続く

 

 

 

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