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日刊オレラ

極上のひまつぶせるマガジン!

【小説】 第7話『リベンジと真相』~異世界バンドマンは世界を救わない~

小説 小説-異世界バンドマンは世界を救わない




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イラストbyまがたさん

 早速神殿へと向かう。すると入り口の前で門番に止められた。

「ここから先は関係者以外立ち入り禁止だ」

 

 

 

「僕は関係者だ。カナリアに会いに来たんだ」

「貴様!」

 すると突然、門番が手にしていた槍をこちらに向けてきた。

「カナリア様を呼び捨てにするとは無礼者! この場で処分してくれる!」

 しまった。普段フレンドリーに接してくれていたから忘れていたけど、カナリアはこの世界の女神なのだ。女神を呼び捨てにしたら、神殿の門番なら怒って当然だろう。

「僕はカナリア、様の知り合いです」

「それならば証拠を見せよ」

 証拠と言われても困ってしまう。どうしたものか。

「どうかしましたか」

 その時、聞き覚えのある声が近くから響いた。

 

 聞き覚えのある声。するとそこにクックさんとロビンさんが姿を現した。

「なにかありましたか?」

「実はカナリア様に面会したいと言う男がおりまして」

 門番が僕の方を見る。すると僕の存在に気づき、神官二人の顔色が変わった。

「あなた、元の世界に帰ったはずでは!」

「カナリアに会うため戻ってきました」

 するとロビンさん真面目な表情で問いかけてくる。

「まさか、もう一度チャンスをくれと言うのではあるまいな?」

「そのまさかです」

 その問いに即答すると、クックさんの表情が厳しい物に変わった。

「あなた達のせいでカナリア様の立場がどれほど危うくなったと思っているのですか! 恥を知りなさい!」

 クックさんの怒声が響いた。

 

「ここまで言うからには、僕だって勝算はあります。まずはこれを聞いてください」

 そう言い、持ってきていたギターを鳴らす。ギターの演奏を始めると、クックさん達の表情が変わった。

 違和感の正体である『それ』を無視して、ギターと共に歌を歌う。あのカナリアが褒めてくれた歌を。

 一曲歌い終わる頃にはその場にいた誰もが明らかに高揚していた。ようやく弾けた。これが、これこそが僕の本当のギターだ。

「こんな音楽を聞くのは、初めてじゃ」

 ロビンさんがポツリとつぶやく。やはりこの世界においてロックは革命的な存在らしい。

「納得して頂けましたでしょうか?」

 僕が尋ねると、クックさんは一言「わかりました」とだけ答えた。

 

 僕はそのまま客室に通され、五分程待たされた。すると客室のドアを開け、一番会いたかった人が姿を現す。

「ケンスケ様、本当にケンスケ様なのですか?」

 そう言って駆け寄ってきたカナリアの目は赤かった。昨晩いっぱい泣いたんだろうな。そういう事がうかがい知れる。

「僕だよ。昨日は本当にごめん。僕達のせいでカナリアに迷惑をかけて」

「お願いしたのは私の方です。だからお気にならさらず」

「それじゃあ、不躾だけどこっちからもお願いをしていいかな?」

 僕の言葉にカナリアが目を丸くする。僕は一度咳払いをすると、カナリアに向けハッキリとこう言った。

「もう一度ライブをやらせて欲しい。今度は絶対に失敗しない。約束するよ」

 

「もう一度、ですか?」

 カナリアが不安そうにそう尋ねてくる。だから僕はそれに答えた。

「ああ。僕は発見したんだ。前回のライブで失敗を招いた違和感の正体を」

「それでは、その違和感の正体さえわかれば、ケンスケ様達はいつも通りの演奏ができるのですね?」

 その問いに僕は頷く。

「まずはもう一度部室に来て欲しい。そこで僕達の演奏を聞いて、それから答えを出して欲しいんだ」

 僕の願いに対し、カナリアが考えこむような姿を見せる。一度は結果的に裏切られたのだ。臆病になるのも当然だろう。

「……わかりました。それでは明日、ケンスケ様達の部室におじゃまします」

 その答えに、僕は小さくガッツポーズをした。

 

 翌日、僕はメールで村ちゃんと天馬君の二人を部室へ呼び出した。放課後、二人が部室に現れる。

「部活は当分休止って言ったはずだぞ」

 そう村ちゃんは冗談のように言った。それに思わず僕は笑みを浮かべる。

「それで大月氏、拙者達を呼び出した理由とは?」

「一度だけ僕の演奏に付き合って欲しいんだ。もう世界を救うとか関係なく、ただ楽しんで演奏するためだけに」

 僕の言葉を聞き、二人が一瞬渋い顔をする。だがその表情はすぐに明るくなった。

「一度くらいなら良いよな。俺も腕が鈍りそうで嫌だったんだ」

「拙者も、大月氏の頼みなら断れないのでござるな」

「ありがとう!」

 僕は二人に感謝し、頭を下げた。

 

 それぞれが各楽器の準備をして、定位置につく。すると村ちゃんが声をあげた。

「この間失敗した分、鬱憤を晴らすぞ!」

 その声がキッカケとなり、天馬君がドラムのスティックで合図を取る。

(ワン、ツー、スリー、フォー!)

 いよいよ演奏が始まる。村ちゃんのベースが響き、天馬君のドラムがリズムを刻む。それに僕のギターが加わり、演奏が加熱していく。

「なんだ、なんだこれ!」

「この前と違うでござる!」

 二人が演奏しながらつぶやく。やっぱり違和感の正体は『それ』だったか。

 僕が確信を得たところで演奏が終わる。すると二人がすぐこちらにやってきた。

「一体これどうなっているんだ?」

 その問いに僕はニヤリと笑った。

 

「この間まであった違和感が完全に消えているじゃないか! なんだよこれ!」

「何か知っているのでござるか? 大月氏!」

 二人が詰め寄ってくる。僕は二人の質問に答える前にゲストを呼ぶ事にした。

「もう出てきていいよ」

 すると今まで透明化していたカナリアと神官の二人が姿を現した。

「おっぱいちゃん!」

「それにクック氏にロビンたんも!」

 村ちゃん達が驚きの声をあげる。もう会うこともないと思っていただけに驚きだろう。

「こんなに凄い演奏が出来るなんて。胸の事ばかり考えているバカではなかったのですね」

「さすがワシの婿候補じゃ。お見事!」

「凄い、凄いですよ、ケンスケ様!」

 カナリアと神官の二人は明らかに興奮していた。

 

 さて、そろそろ種明かしといこう。僕は一度咳払いをし、注目を集めた。

「村ちゃん、僕達はずっと違和感があって困っていたんだよね?」

「ああ、だがその違和感の正体がわからなくて」

「それじゃあ、僕らが違和感を覚えるようになったのはいつから?」

「それは異世界に初めって行った時でござるな。……あっ!」

 天馬君は早速気づいたようだ。僕はいよいよ種明かしをする。

「僕達が感じていた違和感の正体、それは『世界を救わなければいけない』というプレッシャーだよ。このプレッシャーがあったから、まともに演奏できなかったんだ」

 これが違和感である『それ』の正体だ。僕の言葉に村ちゃんと天馬君は深く頷いた。

 

 種明かしを終え、僕は改めてカナリアに向き直った。

「聞いての通りだ。僕達は世界を救うために演奏するとなると、また本番で失敗すると思う。でも自分達のため、自分達が楽しく演奏するためになら皆で盛り上がれる音楽を奏でられると思うんだ。それじゃあダメかな?」

 僕が思ったままの言葉を口にする。するとカナリアが目を潤ませ僕の問いに答える。

「ケンスケ様達がそれで最高の演奏ができるなら、私は構いません。私からも改めてお願いします。ケンスケ様達が楽しめる音楽を、ぜひ私達の世界で歌ってください!」

 カナリアの言葉に僕は胸が熱くなる。今度こそライブを成功させよう。自分達で楽しみながら。そう僕は心に誓った。

 

続く

 

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