読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

日刊オレラ

極上のひまつぶせるマガジン!

【映画紹介】遂に掴み損ねたもの『フォックスキャッチャー』【アカデミー賞5部門ノミネート作品】

映画 映画-レビュー




 

 http://image.eiga.k-img.com/images/movie/79055/poster2.jpg?1418349227

                出典:http://eiga.com

 

あらすじ

レスリングでオリンピックの金メダルを獲った経験のあるマーク(チャニング・テイタム)はその名声に見合わない生活を送っていた。ある日、同じく金メダルを獲った兄・デイヴ(マーク・ラファロ)の代理で行った学校の講演会の帰りにデュポン財閥の御曹司ジョン(スティーヴ・カレル)から電話を受け、翌日に彼の家へ招かれることになる。そこで話されたのは「レスリングのチームを作るので参加して欲しい」というスカウトの話だった。普段の生活や周りの自分の扱いに不満を持っていたマークは心の中で歓喜しジョンの作ったチーム「フォックスキャッチャー」に所属することになるが、年月と共にジョンとの関係が歪み始めていく。

 

 

 

ポイント

2人の孤独な人間と1人の「出来た」人間

レスリングで金メダルを獲ったものの競技環境の悪さと自身の口下手さや性格から大成してからも恵まれた生活を送ってこなかったマークと、デュポン財閥という大財閥の御曹司で何にも生活に不自由を感じなかったジョンは「孤独」という点で酷く共鳴する。特にマークは自分が評価されたことに対して深い喜びを感じ、ジョンに対して信仰心すら抱く様になる。

それに対し、兄のデイヴは良識もあり人柄も良く人々に愛されている上、小さいながらも温かな家庭を持っている。兄の様になれないマークはもがき、八つ当たりしながらも彼に甘えるしかない。ジョンも最初は誘いを断られたものの、彼に対して憧れの様なものを抱き「金に糸目は付けず」二度もチームへと招く。2人とデイヴの間には圧倒的な溝があり、2人がそちら側に行こうとしてもそれを叶えることは決して出来ない。

 

全く同じことを繰り返すジョン

この作品をもしこれからご覧になる人がいれば注意して観ていただきたいのだが、本作でジョンは最初から最後まで全く変わらない。それは映画内で起こることだけではなく、彼の口から明かされる幼い頃の話からも彼が変わっていないことがわかる。

特にフォックスキャッチャーが大会でチームが金メダルを獲った後の祝勝会で行う彼がメンバーにさせる行動と、その後彼自身がレスリングを始めて母親にその様子を見せる時の行動が、俯瞰して見た時に図らずも同じだということに気付いた時に観る者はジョンという人間の寂しさを感じることになる。

 

すぐそばにある事実

ここまで読んで、全く理解に及ばない人間の話だと思われるかも知れないが、本作はとても身近なものを描いている作品だと私は感じる。

人生において他人からの評価は必要不可欠だが、自分が思っている様にはなかなか他人から評価を得られないという経験はないだろうか。大事な人の期待に応えられなかったことは?もしくはようやく自分を評価してくれたはずの人間が、ふとした瞬間に自分を物や駒だと思っているということに気付いたことは?搾取されている人間を対して「でも報酬は貰ってるんでしょ?」と投げ掛けられる言葉に違和感を覚えたことは?

1つでも身に覚えのある人ならこの作品を楽しめる要素はあるはずだ。本作を通して我が身を振り返ってみるのも良いだろう。

 

さて、本作は実際の事件に基づいた薄暗い話ではあるがその場の「選択」によってきちんと前に歩いて行けるという希望も最後には示されるので、どうか身構えることなく観ていただきたい。

 

作品情報

『フォックスキャッチャー』

監督:ベネット・ミラー

公開年:2014年(日本では2015年)

出演:チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、スティーヴ・カレルほか

 

 

▼この記事を書いた作家▼

 

 

 

▶掲載作家募集開始!