日刊オレラ

極上のひまつぶせるマガジン!

【コラム】わたしはわたし-2-



今回はすこししっとりとしたおはなし。

これは小説のようで、小説ではないかもしれない。

これは現実と想像が入り混じったものかもしれない。

とてもとても曖昧だけど、ふと、何かを思う人がいるかもしれない。

曖昧な言葉のなかに潜めた現実を、見つけ出してくれたらいい。

 

ただ、大切な人に幸せになってほしいから、綴ります。

 この話の中の「わたし」が「わたし」になるまで、お付き合いいただければ幸いです。

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初回記事はこちら

orera.hatenablog.com

 

わたしはここにいる

世間は大型連休の到来に浮世立っていた。

差し迫る連休のことは、テレビのニュース番組を何気なく観ていて気がついたんだ。

 

若くてキラキラしていて、明るいトーンの服を見事に着こなした同世代と思われるアナウンサーが、「今年は最大で9連休を取得し、海外旅行を予定しているひとが多いようです!」なんて言いながら、やけにテンションの高い街頭インタビューをしている様子が目に入ってきたから。

 

「21歳・大学生」

わたしと同じ歳の女子大生3人組が、インタビューの対象になっていた。

 

やや傷んだ毛先が気になるけど、みんな明るく髪を染めて、ふわふわとしたヘアスタイルをなびかせている。

わたしと比べるとメイクも濃い目。だけど、それが異常な「盛り」ではないことぐらい、流行に疎いわたしにだってわかる。

 

むしろ、「フツー」なんじゃないかな。

 

だって、わたしが通う大学に一歩入れば、まわりの子はみんなそうだもん。テレビに出ている子が特別なんじゃない。

 

インタビューを受けている子たちは、次の大型連休をつかって台湾旅行にいきまーすと答えた。

バイト代から旅費を工面して、3人で安めのツアーに申し込んだそう。

 

いいな……。素直に、そう思った。

思っただけにとどまったワケは、母の言葉で全て説明がつく。

「やあねえ、女の子だけで旅行だなんて。親の目も届かない場所に何日も行くなんて、あの子たちの親御さんはどういう考えなのかしらねえ。それにあんなつやつやした唇、いやらしい! 遠いところで嫁入り前に辱めにあったらずっと独り身よ? 親御さんが一生面倒みることになるのに。あなたはそういうことないでしょうね?!」

 

ため息しか出ないよお母さん。

親の目から離れて集団で旅行に行くなんて、本当ならわたしも小学校で経験するんだよ。先生が引率するとはいえ、中高生の修学旅行は班で自由行動の日もあったんだよ。

 

だれもが経験する機会を、お母さんとお父さんは「心配だから」と奪ってきた。

卒業アルバムは嫌いだ。

修学旅行で楽しげに笑うクラスメイトの写真を見るのが、辛い。

 

少しグロスを塗っただけで、いやらしいって発想に至るお母さんのほうが、よっぽどいやらしいよ。

買い物や習い事で街中を歩くたび、若い子とすれ違うたび、お母さんは心の中で人々を汚らわしいと思っているのだろうか。

 

初々しく手を繋いで歩く、高校生カップルだって多いでしょ。

そこから10年近く連れ添って結婚するカップルだっているでしょ。

いまどき嫁入り前に親しい仲になることは、珍しくはないんだよ。もちろん、自己責任だけどね。

 

そういうわたしはというと、お母さんの「持論」に反論すれば、2倍、3倍になって返されることがわかっているので、もうなにも言わない。やらない。

疲れちゃう。

ただ黙って従うことが、一番の平穏なんだ……。

 

お母さんは、わたしがアルバイトで稼ぐことも反対した。

両親が希望する大学に進学させてもらえたことには感謝しているし、そのぶんせめて交通費やお昼代くらいは自分でまかないたい。

きちんとした理由を述べても、ことごとく却下されてきた。

 

「学校から帰って夜遅くまでアルバイトだなんて危険」

「定期代は出せます。そのためにお父さんが頑張ってくれているの。お昼もお弁当を作ればいいでしょう。テキストだって必要な時は言いなさい。買ってあげなかったことありますか?」

 

必要な物を買ってもらえなかったことはない。それは本当にありがたいと思っている。

お弁当は自分で作ればいい。これももっともだ。無理にお金をかけて、学食でおしゃれなランチを食べる必要はない。

何年も履いて潰した靴も、母と買い物に行った時に新調してくれる。

 

どちらかといえば、うちは裕福な家庭なんだろうな。

だからといって、いつまでも両親の脛をかじりたくない。

それに、たまには友達と気ままに買い物したり、流行りのカフェで新作ラテを飲んでみたい。

でも、それはわたしのわがままなんだよね。

 

いまだ、定額の小遣いはない。

必要な時に、必要な金額を、「両親が納得する理由」であればもらえる。

もちろん、レシートは必須だ。

 

両親は、わたしがなにをどこで、どんなものを買ったのか、常に把握していなければ気が済まないのだ。

娘に自由になるお金を与えると、抑止が効かなくなると思っているんだって。

基本的に一文無しのわたしは、大学と家の往復以外、ひとりになる時間がない。

 

どこかに行くお金も、勇気もない。

どこかに行く時は、いつもそばに家族がいる。

 

今度の連休は、家族旅行の予定はない。

大学も休みで、どこにも行く予定がない。誰かと会う、予定すらない。

わざわざ、小遣いをねだってまで誰かに会わなきゃならない理由なんてないんだもの。

両親が汗水垂らして養ってくれているから、浪費しちゃいけないよね。 

 

大型連休なんてなくなればいい。

わたしにとっては、長い長い、収監期間。

 

ねえ、誰か聞こえる?

わたしはここにいる。

誰かわたしを連れ出して。

 

 

 

これを書いたのは

 おひさしぶりなたまさきでした。