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日刊オレラ

極上のひまつぶせるマガジン!

【オレラ企画!】 オレラ映画ライター感想対決(後半) 『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』(2013)



 烏之介です。

さて、今回は青空ぷらす、烏之介の感想対決の後半をお送りしたいと思います。

後半で取り扱うのは2013年公開の邦画、『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』です。

前作にも増して豪華俳優陣が登場する本作を2人はどう観たのでしょうか?

 

 

          http://image.eiga.k-img.com/images/movie/77702/poster.jpg?1366210800

                     出典:http://eiga.com/

 

 

 

概要

前作に引き続き大泉洋、松田龍平らを起用した人気シリーズ第二弾。人気女優の尾野真千子、ガレッジセールのゴリなども出演している本作はファンを中心に前作同様大ヒットを記録した。監督は橋本一。

 

あらすじ

探偵(大泉洋)の友人であったマサコ(ゴリ)がマジック大会の翌日に遺体となって発見される。しばし恋愛に現を抜かしていた探偵が本格的に捜査し始めるとマサコの死に反原発派の政治家・橡脇(渡部篤郎)が関わっていることを知る。しかしそんな時、突然暴力団や謎の集団、更には素性のわからない依頼人(尾野真千子)などが探偵の前に現れ、謎が謎を呼び事件は思わぬ方向に進んでいく。

 

 

 

 ※ここからは重要なネタバレを多く含みますので、これから観ようという方は作品を観てから読んでいただくことを推奨します。

 

 

 

 

烏之介の感想

 

 

「探偵の物語」として残念

前作同様作品の世界観やキャラクターは魅力的で、ファンの人も満足出来る内容になっていましたし、観ていて舞台であるすすきのに行ってみたいと私は感じました。

ただ、推理小説が原作だと聞いて観ていたんですけど推理要素が無いどころか、物語として酷かったです。

まずこの話の中で大泉洋演じる〈俺〉こと探偵がしたことを振り返っても、自ら起こした行動で真相に近付くことを何も出来ていないんです。それどころか間違った方向に依頼人を導いてしまっていて、あわや依頼人に故人が大切にしていた人を殺させてしまう所だったわけですよ。

百歩譲ってそれは物語の流れ上仕方ないことだとしても、犯人に関する全てのことが酷過ぎます。良いミステリーというのは物語の序盤で既に犯人が登場している*1ものだと言われますが、本作における犯人は言い訳の様に一応登場し、伏線だとでも言いたげに少しの情報を登場人物のセリフに織り込んでいるものの、物語が終わった後「なるほど」と思う様な内容ではありません。そもそも本筋と一切関係ない人物が、一切関係ない動機で殺し、終盤になって事務的に登場し役目が終わると事後処理かのように冷淡に片付けられるという色んな意味で最悪の種明かしでした。

しかも犯人は被害者を「同性愛者」だという理由だけで殺しますが(これがミステリーの適切な動機かどうかはさておき)、探偵も無実の人間に対し「同性愛者」だと暴露されることに怯えたから被害者を殺したんだろうと詰め寄ります。これってどっちも偏見という意味では同じ*2じゃないですか。全編通して一貫しているのはこういう「政治家=悪」という様な一方的な考え方で、別に個人がどう思っていようが構わないですけどそれがあるせいでことの真相に全然近付かないんですよ。

それに主人公がいつも正しい人物像であれとは思わないですけど、私立探偵ものの良い所って良い意味で厭世的だったり、世間に対して距離を取って見ていたりする所だと私は思うので*3、同じ結末でも「一般的に政治家は悪だ」と言われているからこそ、本当にそうなのか確かめて凶行に及びそうになる依頼人を止めるという方が物語的にも作品のメッセージ的にも正しいんじゃないでしょうか。

 

確実に面白くなっていたはずなのに・・・

本作の酷い所の多くは要素は面白いんですけど、そこに付け加えられてる物が「社会的メッセージ」風なのが残念というか本当に勿体ない。

例えば途中に出てくる「探偵を襲う集団」なんかは街のどこからいつ出てくるかわからないという点で名作『ウォリアーズ』を思い出させますし、そのシーンで出てくる「野球男」という名前のキャラなんかはもろに『ウォリアーズ』に出てきた「BASEBALL FURIES」というギャング集団っぽくてワクワクする要素しかないんですよ。

(あるギャングチームが集会で実力者のギャング1人を殺したという濡れ衣を着せられて、様々なギャングからひたすら追われるという映画。ここで紹介している「BASEBALL FURIES」が登場するのは動画の1:43あたりから)

 

でもその集団が「政治家を応援する善意の市民団体」ということがわかると取って付けたような「社会的メッセージ」を感じてしまってみるみるうちにさっきまでのワクワク感が萎んでいってしまうんです。

その他にもセクシャルマイノリティである人々がその街でどう生きてきたかだって、政治なんか絡めなくても切り取り方一つでもっとその街の風俗や魅力を伝えられたはずだと思います。

 

様々な工夫が凝らされた本格的なアクションシーンはもちろん、前述した野球男や謎のウェイトレス・峰子といった脇役のキャラも良かっただけに大変勿体ない作品だと私は思いました。

 

 

 

青空 ぷらすの感想

娯楽映画で社会的メッセージを入れ込むことの難しさ。

ぷらすです。
いつもは、感想の前に『概要』と『あらすじ』をつけるんですが、今回は烏之介さんにお任せして、僕は感想のみ書きたいと思います。

本作は、札幌在住の推理作家 東 直己さんの『ススキノ探偵シリーズ』を原作にした、北海道札幌が舞台のハードボイルドシリーズです。
ススキノのバーを事務所がわりにしている探偵(大泉洋)が助手(というかほぼ相棒)の高田(松田龍平)と共に、事件の謎を解いたり、非道い目にあったり、巨悪(前作は関西裏社会の黒幕・本作では代議士)を相手取り奮闘する物語です。

探偵の<俺>は、ハードボイルドを気取ってはいるものの、どこか抜けていて、それでいて熱血漢というタイプの男なんですが、主演の大泉洋さん自身の陽性なキャラクターとも相まって、とてもハマっていたと思いました。
松田龍平さん演じるクールな男、高田とのバランスも良く『ドラマの構成』としても、前回同様にソツがないと思います。

内容的にも、キャラクター的にも、どこか70~80年代を思わせる作り(多分わざと)で、松田優作主演のTVドラマ『探偵物語』のオマージュ的な演出もチラチラ見えたりするので、当時少年少女時代を過ごした人には懐かしく感じるかもしれません。

ただ、全体的にTVドラマ的というかウェルメイドな演出でもあり、2013年の映画演出としては、少々時代遅れ感も無きにしもあらずかなーと。
まぁ、その辺は好みの問題だと思いますけども。

探偵の馴染みのオカマ、マサコちゃん(ゴリ/ガレッジセール)が殺される事件から本作はスタートします。
前作では『謎の女』の依頼に振り回される形で事件に関わった探偵ですが、本作は依頼人のバイオリニスト 河島弓子(尾野真千子)が依頼人として序盤から登場。
彼女と高田、探偵の三人で事件に挑んでいくという図式なんですね。

前作がハードボイルドに寄っていたのに対し、本作は謎解きを前面に出る作りだったように思います。

ただ、ミステリー部分が上手くいっているかと聞かれると、正直首を傾げざるを得ないんですよねー。

ぶっちゃけ犯人の正体や動機には「はぁ↑?」と思いました。

いや、思い返してみれば、前半で一応それらしき伏線が張られているし、一応本作のテーマにもちゃんと絡めてあるんですけどね。
ただ、どうしても後付け感が拭えないというか。モヤモヤせずにいられません。

本作に絡むテーマは『名も無き者の正義と悪意』じゃないかと思います。

その中で恐らく監督は『多数派=強者に少数派=弱者が踏み潰される世界は正しいのか?』みたいな事を言いたいんだと思うんですが、ただ根本的な部分で構造的問題があるように思いました。

今回は物語の主軸部分に3・11以降の原発問題が絡んできます。
劇中登場する代議士 橡脇孝一郎(渡部篤郎)は脱原発派の急先鋒であり、北海道の原発再稼働反対というスローガンに多くの(狂信的な)支持者がいるいるという設定で、物語全体にも大きく絡んできます。

個人的に、娯楽と思想はそもそも食い合せが悪いと思うし、こうした『思想』が関わる問題を劇映画に取り込む時は、かなり注意深く扱わないと、物語自体が思想に『食われてしまう』んじゃないかなと感るんですよねー。実際、僕が本作に感じたモヤモヤはこの部分によるところが大きかったです。

もちろん、監督を始めスタッフはその辺も織り込んでストーリーを練っていると思うし、今回の物語に「思想的アイコン」が欠かせないのは分かるんです…
あのオチのつけかたは正直、まったく納得がいきません。
劇中での思想的決着から逃げたようにしか見えないんですよ。
逃げるくらいなら最初から手を出すんじゃねーよ!
 っていうね。

その展開が原作通りなのか、映画オリジナルなのか、諸事情により当初描こうとした事が出来なかったのかは分かりませんけどね。
前作が(ツッコミどころはありながらも)中々イイ感じだっただけに、正直ガッカリしてしまいました。

あと、中盤がなんだか北海道観光マップみたいになってるんですけど。
ここも何かしらの諸事情か絡んでるのかもしれませんが、
探偵・高田・ヒロインの3人が水族館でキャッキャ楽しだり、イモ団子食べるシーンはいるかなー?

さらにそこから敵に追われるシーンでは、前作でも出た悪役が再登場するんですが、お前、前作で逮捕されてなかったんかーい! 
と思わずツッコんでしまいましたw
ぶっちゃけ前述のシーンと合わせて余分だと思ったし、ウージー(サブマシンガン)ぶっ放すのはいくらなんでもヤリすぎじゃないかなーと。

北海道はそこまで無法地帯じゃねーよw

と、道民としてはツッコまずにいられません。

ウエルメイドとはいえ、全く架空の世界の物語というわけではないんだし、その辺のリアリティーはある程度あったほうが、個人的には受け入れ易かったなーと思いました。

そんな感じで、お世辞にも出来がいいとは言えないし、ツッコミどころは多々あるものの、じゃぁ、見るに堪えないほどつまらないかと言われれば、まぁ、そこまで酷くはないんですよね。

それは、監督を始めスタッフの多くが東映の社員であり、テレビドラマや映画での職人的な観せ方の基礎を心得ているからだと思います。
また、シリーズ2作目ということで、主演の大泉さんと松田龍平さんを始め、レギュラーメンバーの関係性が一歩深まっていて、彼らのやりとりのシーンが非常に楽しいんですよね。

なので、まずは前作を見ていただいて、気に入ったら次回作への繋ぎとして本作を一応チェックしていただければいいんじゃないかとw

今回は、正直風呂敷を広げすぎて失敗してしまいましたが、その反省を生かして前作のテイストで物語を作ってもらえれば、面白くなっていくんじゃないかなーって思いました。

そんな訳で、興味のある方はまず前作から是非!

 

▼ちなみに僕の前作の感想はこちら▼

aozprapurasu.hatenablog.com

 

 

 

おわりに 

ここまで読んで下さってありがとうございました。

突然にはなりますが、私、烏之介は日刊オレラでの活動はこの記事を以て終了となります。

今まで私の記事を読んで下さった方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

また、青空ぷらすを始め様々なライターが所属する日刊オレラをこれからもどうぞよろしくお願いします。

 

 

▼この記事を書いた二人▼

unosuke-0812.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

 

 

*1:つまり読み手や観客が推理出来る状態にある

*2:少しややこしいので補足しますが、「トラブルが起こりそうになると政治家は汚い手段でもみ消す」というステレオタイプの偏見です。

*3:私立探偵は公立探偵(警察)と違って後ろ盾が無く社会的弱者なので身分や肩書きに惑わされない視点で人間を見るからこそ面白いのではないかと思うので