ぷらすです、こんばんは。
今回ご紹介するのは、あの「アイアンマン」の監督、ジョン・ファヴローが監督、脚本、主演を務めた映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」です。
ジョン・ファヴローは監督としても有名ですが、アイアンマンでは主人公スタークの運転手ハッピー・ホーガン役で出演もしているので、役者として認識している人も多いかもですね。
概要
一度は有名店のシェフまで上り詰めた男が、料理評論家とツイッターでのケンカが元で全てを失うが、故郷の味「キューバサンドウィッチ」を売るフードトラックで再起を図るというストーリー。
ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニー・Jr、スカーレット・ヨハンソンといった豪華キャストが花を添えている。
あらすじ
一流レストランのシェフとして腕を振るっていた料理人 カール・キャスパー(ジョン・ファヴロー)の生活は一見順風満帆のようだが、革新的な料理を嫌いオーソドックスなメニューを求めるオーナー、リーバ(ダスティン・ホフマン)と衝突し、元妻のイネズ(ソフィア・ベルガラ)や息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)とも離れて暮らしている。
そんなある日、著名な料理評論家でブロガーのラムジー・ミッシェル (オリヴァー・プラット) の来店に向け、新メニューを出そうとするも、リーバ に「いつもの料理」を出すよう指示される。
その結果、ラムジーから酷評されたカールはツイッターで反撃し大炎上。
それが元で店を解雇され、再就職もままならない状況になってしまう。
栄光から一転、失意のどん底に突き落とされたカールを見るに見かねたイネズはパーシーのお守り役として生まれ故郷マイアミに誘う。
感想
ラッパーの宇多丸さんもラジオで言ってましたが、半自伝的なインディー映画で注目されたジョン・ファヴローが、「アイアンマン」での大成功から「エイリアvsカーボーイ」の不評や「アイアンマン3」の監督を降板している事を知ってる人は、この映画の主人公カールとジョン・ファヴロー本人をどうしても重ねて観てしまいますよね。(本人はマーベルとのイザコザを否定しているけど)
本作のテーマを一言で言うと、「色々しんどい時もあるけど、美味いメシとゴキゲンな音楽。あとは気のいい仲間がいれば人生概ねハッピーじゃん?」でしょうか。
序盤、保守的なオーナーとは意見が合わずに思うような料理が作れず、料理評論家にはケチョンケチョンに貶され、息子とは上手くコミュニケーションが取れず、よく理屈も分からないままメール感覚で料理評論家に当てたツイートは拡散され大炎上――と、序盤はもう散々なんですが、それでも暗さや重さは感じません。
その辺の葛藤や鬱屈のシーンをじゃんじゃんすっ飛ばしてるのもあるし、ジョン・ファブロー自身の極めて陽性なキャラクターもあるんでしょうね。
そして、ファヴローは本来であれば悪役の料理評論家や、レストランのオーナーの言い分にもちゃんと「理」があるように描いています。
観ている側が「確かに評論家やオーナーも大概だけど、カールだって悪いトコあるよね」と感じるように、どちらか一方だけを悪者にしないバランスで作られているんですね。
自分のツイートが拡散されて収集がつかなくなるシーンなんかは、SNSの負の側面もちゃんと残しつつ、でもちょっと笑っちゃうような軽いタッチで描いてコメディーとして重くなりすぎず、かつ「SNS=悪」みたいな画一的な描き方にならないように配慮しているように思いました。
中盤以降は、まさにジョン・ファヴローお得意の展開。
カールが、元妻の元夫(ややこしい)で会社社長のマーヴィン (ロバート・ダウニー・Jr) の助力によって手に入れたオンボロフードトラックが、徐々に使えるようになっていく様子は、「アイアンマン」でトニー・スタークがアイアンマンを作り上げていく時のワクワク感を彷彿とさせます。
途中からはレストランで部下だったマーティン (ジョン・レグイザモ)も仲間に加わり、出来上がったトラックで作るのは、故郷の味で彼の原点でもある
「キューバサンドウィッチ」
バターで表面を焼いたパンにたっぷりのチーズやピクルス、下味をつけてグリルした豚肉とハムを挟み、チーズが溶け出すまで両面焼きの鉄板で挟んで焼き上げるホットサンドなんですけど、これがもうね…………
超美味しそうなんですよ!
観ていてお腹が鳴りまくり。
前半に登場する料理の数々ももちろん美味しそうなんですが、この「キューバサンドウィッチ」には叶いません!
あーー、食べてみたーーーーい!!
そうして準備が整い、三人はフードトラックで移動販売しながらマイアミ、ニューオリンズ、テキサス、そして終点ロスアンゼルスに向かいます。
気楽で楽しい男三人の珍道中。
料理や仕事を通して、いままで向き合ってこなかった息子パーシーとの距離も近づいていきます。
しかも、道中どこでも彼らのフードトラックは大盛況。
なぜかと言うと、パーシーが道中の様子や写真をツイートしてるからなんですね。
そして、「キューバサンド」を食べた人たちがツイートを拡散することで、益々お客さんが増えていく。
前半で、SNSの負の面を描き、後半では良さをちゃんと描くベタだけど素晴らしい展開です。
余談ですが、誰かがツイートを送信するたび、鳥の鳴き声とともに、そのツイートが飛んでいく表現が可愛くて良かったです。
そして、一度は壊れかけた親子の関係の修復にもツイッターが活躍します。
日本のフィクションでは、とかく負の面だけを強調して描かれがちなSNSですが、ジョン・ファヴローは、SNSのツールとしての正負を正しく公平に描いているなと思いました。
そして、映画全編通して流れる音楽も、ストーリーを軽やかに盛り上げています。
特に後半は、カールが失ったものを取り戻していく様子が、ラテンのリズムに載せてテンポよく描かれていくので、観客の気持ちも自然とアガっていきます。
決して大作ではありませんが、明るく楽しく気持ちいいストーリーに美味しい料理、カール=ジョン・ファヴローの底抜けに明るいキャラクターや、パーシーの可愛らしさに癒されて、観終わった時には元気になってる。
そんな素敵な映画でした。
興味のある方は是非!!
▼この記事を書いた食いしん坊▼