ぷらすです。
今回ご紹介するのは、ジョエル&イーサンのコーエン兄弟が1994年に本国で発表したコメディー映画「未来は今」です。
コーエン兄弟と言えば、「ファーゴ」や「ノーカントリー」など、ブラックユーモア溢れるサスペンスが得意というイメージだったんですが、こんな映画も撮るんだ! とビックリでしたよー。
画像出典URL: http://www.amazon.co.jp/
概要
コーエン兄弟が、師匠筋にあたる『死霊のはらわた』や『スパイダーマン』のサム・ライミ監督とともに1984年から共同で脚本を執筆、他にも多大な協力を受けて作り上げたコメディーファンタジー映画。
『ショーシャンクの空に』のティム・ロビンスが主演を務め、ポール・ニューマンら一流のハリウッドスターが顔を揃えている事でも話題を呼んだ。
あらすじ
1958年のNYが舞台。
田舎から夢を持って上京してきたノーヴィル・バーンズ(ティム・ロビンス)だったが、経験のないため就職先は見つからず、なんとかハッドサッカー社の郵便室に職を得る。
同日、会社は成績優秀で前途洋々だったにも関わらず、社長のハッドサッカー氏(チャールズ・ダーニング)は、44階の会議室から謎の飛び降り自殺。
会社規定により、このままでは社長の持っていた株が市場に流れてしまうと考えた重役のシドニー・J・マスバーガー(ポール・ニューマン)は、会社一のボンクラを社長に据え、会社の株価を急落させた上で、安値で株を買い戻して会社を我が物にしようと企む。
そして、マスバーガーが社長に任命したのは入社1日目のノーヴィルだった。
感想
僕がコーエン兄弟の名前を知ったのは、つい最近。
『ノーカントリー』という映画を見たときでした。
こんなすごい映画を作る人がいるのかと驚き、遡って過去作を何本か観てすっかりファンに。
僕の中のコーエン兄弟は、理不尽な状況に巻き込まれたり自ら進んで身を投じた主人公が、振り回されてひどい目に遭う様子を、ブラックユーモアたっぷりに描くサスペンス映画の人たち。という認識だったんですが、本作を観て思ったのは、『あ、こういう映画も撮るんだ』ということでした。
いや、本作も基本的には上記の系譜の映画ではあるんですが、思わず顔をしかめるような毒気はなく、むしろ正統派コメディーと言えるような作品だったからです。
もちろん、劇中のアチラコチラにコーエン兄弟独特のクセは見え隠れするし、ファンタジー要素の中にも、一筋縄ではいかない皮肉や毒がほんのり込められてたりはするんですが、全体的には、ひとりの青年の成功と、挫折からの復活を軽いタッチで描いていて、後味も非常に良いハッピーエンドになっています。
で、ここからは僕の妄想というか想像です。
本作は、1958年を舞台に11年前に作られた映画ですが、それにしても映像は古臭さを感じるように作られてるし、ストーリーも役者さんの演技も少々大仰な感じで一昔前のコメディー映画を思わせる作りになっています。
また、ネットで感想を読んでみると、色々な古い映画からの引用もけっこうあるっぽい。
要は、全体が古き良きハリウッドのエンターテイメント映画をオマージュしたような作りになってるんですね。
ボンクラではあるけれど善良で、少年のように純粋な主人公。
出世願望が強く、特ダネ狙いで人の良い主人公を騙して近ずくも、次第に心惹かれていくヒロイン エイミー・アーチャー(ジェニファー・ジェイソン・リー)
己の私利私欲のために主人公を利用し罠をしかけて追い払おうとするけど、結局天罰が下る悪役。
少々ご都合主義なところも含めて、僕が子供の頃に観た映画のような、勧善懲悪の優等生的なコメディー映画を想起させます。
で、僕が妄想するに、本作そのものがスポンサーに対してコーエン兄弟の仕掛けた皮肉なんじゃないかなーと。
本作の制作費は2500万ドルとも4000万ドルとも言われ、インディペンデント出身のコーエン監督にとっては巨額の予算だったそうです。
そして、予算が多いということは、それだけ内容に口も出されるのは想像に難くないわけで。
だからコーエン兄弟は表向きスポンサーが気に入るような古き良きハリウッドのパロディーのような映画を、皮肉を込めて作ったんじゃないかなーなんて思ってしまいました。
「ほら、お前らが欲しいのはこんな映画なんだろ?」って。
そう考えると、伏線がこれみよがしだったり、主人公が必要以上にボンクラに描かれてたり、話の展開に所々アラが見えたりするのも、納得できるなーと。
もちろん下衆の勘ぐりなんですが、そんな事を考えちゃうほど、僕の中で本作は(コーエン兄弟の作品の中で)異色だったんですよねw
とまれ、思わず笑っちゃうシーンもたくさんあるし、最後はスッキリする楽しい映画です。
興味のある方は是非。
▼この記事を書いたボンクラ▼
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